江川卓『カラマーゾフの兄弟』は滋賀県立図書館にあります詳細を見る

    【12】どうしてこんな人間が生きているんだ! ~ゾシマ長老はなぜ大地に頭を下げたのか

    カラマーゾフの兄弟 ドミートリイ なぜこんな人間が生きてます?
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    目次 🏃‍♂️

    どうしてこんな人間が生きているんだ!

    章の概要

    イワンと神父らの議論が白熱した頃、長男ドミートリイが遅刻してやって来ます。ところが、父フョードルは相変わらずのおふざけで、ミーチャの婚約者カチェリーナや、思いを寄せる情婦グルーシェンカのことまで侮辱します。

    ドミートリイが積年の恨みと失望感を吐き出すように「どうしてこんな男が生きているんだ」と口にする場面は、文学史に残る名台詞だと思います。

    ちなみに、この台詞は、原卓也訳(新潮文庫)では、「どうしてこんな人間が生きているんだ!」になっています。

    長男ドミートリイと父フョードルの確執の上に、イワンの「神がなければ、すべてが許される」について語られる、作品屈指の名場面です。

    動画で確認

    イメージが掴めない方は、映画『カラマーゾフの兄弟』(1967年)のクリップが参考になります(約1分)
    ロシア語ですが、原作を知っていれば、だいたい、どの場面か分かると思います。

    フョードルは皆の眼前でドミートリイを貶め、カチェリーナやグルーシェンカのことまで辱めます。にやにや顔のイワンがいいですね。

    ドミートリイの人物像

    ドミートリイは、金銭の相続や情婦グルーシェンカをめぐって、父フョードルと激しく対立します。

    ドミートリイの生い立ちは、『【2】 愛の欠乏と金銭への執着 ~父に捨てられた長男ドミートリイの屈折

    カチェリーナ、グルーシェンカ、3000ルーブリのトラブルの経緯は、『【17】ドミートリイの告白 ~3000ルーブリをめぐる男女の愛憎と金銭問題 カチェリーナとグルーシェンカ』にまとめています。

    家族の会合に遅れてやってきたドミートリイについて、

    ドミートリイ・フョードロヴィチは、とって二十八歳の中背の青年で、感じのいい顔だちをしていたが、年よりはずっと老けて見えた。筋肉質で、並々ならぬ腕力の持ち主と察せられたら、そのくせ顔つきにはどこか病的なところがあった。

    顔は痩せすぎで、頬はこけ、顔色がまたなんとも不健康な黄味をを帯びていた。いくらか飛び出した感じのかなり大きな黒っぽい目は、一見、なにかを執拗に見詰めているふうだったが、それでいてどことなく定まらない感じがあった。

    興奮して、いらだたしげに話しているときでさえ、その眼差が、内診の動きについて行かず、なにやら別の表情、いや、どうかすると、その場にまったくそぐわない表情を見せることもあった。『何を考えているのかわからない男だ』とは、彼と話した人がときとしてもらす評言であった。

    ≪中略≫

    この町の治安判事セミョーン・イワーノヴィチ・カチャーリニコフがある集まりの席でいみじくも言いあてたように、《常識はずれの衝動的な性格》の持主であった。

    彼はフロックコートのボタンをきちんとかけ、黒手袋をはめ、シルクハットを手にもって、非の打ちどころのないシックな身なりで入ってきた。

    最近退役したばかりの軍人らしく、口ひげだけを生やし、顎ひげのほうはいまのところ剃り落としていた。深い亜麻色の髪は短く刈りこまれ、こめかみのあたりだけがいくぶん前のほうに梳かしつけてあった。

    歩きつきも軍隊式の、てきぱきした大股の足どりだった。戸口でちょっと立ちどまって、ひとわたり一同を見まわすと、この人がこの場の主人だと見きわめをつけたらしく、つかつかと長老のほうへ向かった。深々と頭をさげて、彼は祝福を乞うた。

    長老はなかば立ちあがって、彼に祝福を与えた。 

    作品冒頭では「金遣いの荒い放蕩息子」のイメージがありますが、本質的に紳士です。

    しかし、カッとなると抑えがきかない性格ですね。

    ゾシマ長老に挨拶するドミートリイ カラマーゾフの兄弟

    本作は、推理小説の側面を持ちあわせるため、ここでも父親殺しの犯人を仄めかす描写が続きます。

    「並々ならぬ腕力の持主」「常識はずれの衝動的な性格」……

    この部分だけ読めば、父親を殺害する短気な息子の姿が浮かぶでしょう。

    また、後半の伏線のように、「この町の治安判事」のコメントが盛り込まれているのも印象的です。

    「黄味を帯びた肌色」「いくらか飛び出した感じの、大きな黒っぽい目」というのは、肝臓が悪い=酒の飲み過ぎ=自堕落な暮らしを想起させますし、傍から見ても『何を考えているのかわからない男』という描写も、自分で自分の感情を制御できず、カッとなると、何をするかわからない気質を物語っています。

    一緒に遊ぶには楽しいが、現実生活では、あまり関わりたくないタイプですね。

    そんなドミートリイも、一応、父親にはちゃんと挨拶します。

    しかし、フョードルの方は息子を愚弄するように、ふざけて返します。

    ドミートリイはもう一度会釈をし、それから、ふいに自分の《親父》のほうへ向き直ると、彼に対しても同じように礼儀正しい、深く頭をさげた会釈をした。どうやら、この会釈のことは、前々からあれこれ考えたあげくのもので、それによって自分の敬意とよき意図を表明するのが義務でもあると、心底考えたものらしかった。フョードルは不意をつかれて面くらったが、とっさに彼なりの活路を見出した。ドミートリイの会釈に答えて、ぴょこんと椅(い)子(す)からとびあがると、息子に向かって、同じような深い会釈を返したのである。

    動画で確認

    会合の場面は、2007年版のTVドラマが詳細に描いています。美術は、1969年版映画の方が原作に近いですが、フョードルの人を愚弄した振舞と、イワン、アリョーシャの反応は2007年版の方が分かりやすいですね。アリョーシャはロシアのブラッド・ピットみたいです。

    https://youtu.be/-YcFzj5MyMo?t=1303

    この後、ミウーソフの介入により、イワンと神父らの議論が繰り返され、有名な「神がなければすべてが許される」と、ゾシマ長老の励ましが描かれます。

    これも名場面ですので、下記を参考にどうぞ。

    あわせて読みたい
    神がなければすべてが許される? イワンの苦悩とゾシマ長老の励まし イワンは「不死がなければ、善行もない。不道徳もなくなり、すべてが許される」という持論を展開するが、ゾシマ長老は彼の懊悩を見抜き、「いつかあなたの苦しみに解決が訪...

    カチェリーナとグルーシェンカを卑しめる

    一方、ドミートリイは、「高潔このうえない令嬢」と讃えるカチェリーナという婚約者がありながら、裕福な町長サムソーノフに囲われているグルーシェンカに思いを寄せ、カチェリーナから預かった3000ルーブリもの大金をグルーシェンカとの豪遊に使い込みます。

    一方、フョードルも、グルーシェンカに熱を上げ、3000ルーブリのお小遣いを餌に、彼女の気を引こうとしていました。抜け目のないグルーシェンカが、莫大な資産目当てに、フョードルと上辺だけの結婚をすることも考えられるだけに、ドミートリイは気が気でありません。これは単なる金銭問題ではなく、痴情のもつれであり、男のメンツをかけた戦いなのです。

    さて、イワンと神父の議論が一段落したところで、イワンの真摯な態度に感激したフョードルは、さっそくドミートリイの神経を逆なでするような言動をします。

    「神のように神聖なる長老さま!」

    彼は大声を張りあげて、イワンのほうを指さした。

    「これはわが息子、わが肉より生れし肉、わが最愛の肉でございます! これは、私が尊敬おくあたわぬ、いわばカール・モールでございまして、こちらの、ただいまやってまいりました息子、あなたさまのお裁きをお願いしました当の相手方のドミートリイ、これは、もっとも尊敬すべからざるフランツ・モールでございます。いずれもシラーの『群盗(注解参照)の人物でございまして、そういたしますと、私は、当の私は、さしづめRegieren der Graf von Moor(領主フォン・モール伯爵)という役まわりでございますな! どうぞご判断を仰ぎとうございます! 私どもは、あなたさまのお祈りばかりでなく、あなたさまの予言をも必要といたしております」

    「そのような奇人めいたもの言いはやめ、またはじめから身内の者を辱しめるような言葉はつつしまれるがよい」

    長老は疲れきった弱々しい声でたしなめた。長老はしだいに疲労の度を加えているらしく、めっきり体力の衰えが感じられた。

    フョードルは、ドミートリイとの金銭問題を哀れっぽく訴えます。

    「みんな私を責めるんです。私ひとりを責めるんです! ≪中略≫ 私が子供の金を猫(ねこ)ばばして、一文のこらずまきあげたなんて言って責めるんです。けれど、ちゃんと裁判所というものがあるじゃありませんか。そこへ出りゃ、ドミートリイさん、あんたが自分で書いた受取やら手紙やら契約書やらをもとにして、あんたにいくらの金があって、あんたがいくら使って、いまいくら残っているか、ちゃんと勘定してくれるのさね! 

    ≪中略≫

    なにしろこの男の放蕩のうわさで町じゅうがわれかえるような騒ぎですものね! それに、以前これが勤務についておった町では、身持ちの正しい令嬢をたらしこむための千の二千のという金を使ったそうでしてね、

    どうだね、ドミートリイさん、こっちはそこまでご存じなんでね、秘中の秘まで細大もらさずさ、ちゃんと証明してみせますとも……」

    ドミートリイは、父からもっと財産をもらえるはずだと思い込んでいます。

    しかし、フョードルは息子にビタ一文、支払う気はなく、財産に関する文書を作成し、法的にそんな権利はないと主張します。

    しかも、ドミートリイの婚約者カチェリーナや情婦グルーシェンカのことまで、「難攻不落の要塞」「黄金の鍵でこじあける」と辱め、ドミートリイは激怒します。

    神聖なる長老さま、ほんとうになさいますかどうか、この男は、家柄もよいし資産もある家の純潔無垢のお嬢さんをたらしこみましてな、自分の元の上官で、聖アンナ剣十字頸章を佩用する、勲功もある勇敢な大佐の娘さんですが、結婚まで申し込んで恥をかかせましたので、いまそのお嬢さんは、身寄りもなくして、この町で暮しておられますよ。

    ところがこいつときたら、れっきとした婚約者のそのお嬢さんを前において、この町のさる凄腕のところへ通いつめている始末でございましてな。もっとも、この凄腕は、以前は、さる尊敬すべきお方と、いわば内縁関係にありましたんですが、そのくせ気性のしっかりした、難攻不落の要塞でございまして、まあ、正妻も同様でございますな、なにせ貞操堅固な女性でして、はい、神父さま方、貞操堅固な女性なんでございますよ! 

    ところがこのドミートリイのやつは、この要塞を黄金の鍵で陥落させようという魂胆なんで、いまこいつが私に向かって横柄な態度に出ておりますのも、そうやってこの私から金をふんだくろうというわけでして、これまでにももう何千という金をこの凄腕のためにどぶに捨てておりますのですよ。で、そのためにのべつ借金をしておるんですが、それも、だれからだとお思いになります? さあ、ミーチャ、言ったものか、言わないものか?」

    「黙れ!」ドミートリイが叫んだ。「ぼくが外へ出て行くまで、待ってもらいましょう。ぼくのいる前で、高潔このうえない令嬢に泥を塗るような真似はつつしんでもらいます……あなたがあの女性のことを口にしただけでも、あの人には恥辱なんだ……許せない!」

    「親の祝福はなんのためだ? わしがおまえを呪ったら、どうなると思うんだ?」

    「恥知らずの猫かぶりめが!」ドミートリイは逆上して一喝した。

    「親に向かって、実の父親に向かって、こう言う男です! 相手が他人だったら、どうでしょう?」

    そこでフョードルは、三週間前、ドミートリイがスネギリョフ退役大尉(後に「少年たち」のエピソードで登場する。少年イリューシャの父親)の顎髭をつかんで、往来にひきずりだし、公衆の面前で殴る蹴るの暴行を繰り返したことを暴露します。

    フョードルは、ドミートリイ名義の手形を発行し、スネギリョフ大尉をメッセンジャーとして、グルーシェンカに渡していました。もし、これ以上、ドミートリイが財産分与について、うるさく言ってくるようであれば、この手形をタネに訴訟を起こし、ドミートリイを監獄にぶち込んでやれ、という話です。(この一件を通して、ドミートリイはグルーシェンカに一目惚れし、モークロエの豪遊=3000ルーブリの使い込みに至ります)

    スネギリョフ大尉は、フョードルの代理でグルーシェンカの所に出かけたに過ぎません。にもかかわらず、頭にきたドミートリイに八つ当たりされ、往来で殴られたのですから、とんだとばっちりですね。(この一件を通して、少年イリューシャはカラマーゾフ一家を恨みに思い、アリョーシャの指に噛みついて、怪我を負わせます。その後、アリョーシャが少年たちと知り合うきっかけになります)

    ※ カラマーゾフの兄弟(まんがで読破) Kindle版より
    グルーシェンカとフョードル 手形を発行 まんがで読破

    ドミートリイは本当に父を憎んでいたのか

    ドミートリイは、父親が財産をけちった上に、グルーシェンカを自分のものにする為、息子を監獄にぶち込もうとしていると訴えます(なんという親子でしょう・・・)

    「親父さん! ぼくは自分の行為を弁護しようというのじゃない。いや、みなさんの面前で、ぼくがあの大尉に対してけだもの同然の振舞に及んだことを認めます。そしていまでは、けだもののように怒りたけったことを悔いてもいるし、そんな自分をつくづく忌わしくも思っています。

    けれど、あなたの代理人とかいうあの大尉は、あなたがいま凄腕といわれたその婦人のもとへ出かけて行って(グルーシェンカのこと)、あなたの持っているぼくの手形を引き受けてくれ、で、もしぼくがあまりうるさく財産の清算を迫ってくるようだったら、その手形をたねに訴訟を起して、ぼくを監獄へぶちこんでくれと、あなたの代理ということで頼みこんだじゃありませんか。

    あなたはですね、ぼくがその婦人に気があるようなことを言って非難したけれど、その実、あなたこそあの人をそそのかしてぼくを誘惑させたんでしょうが! 

    あの人がじかに話してくれましたよ、自分からぼくに話してくれましたよ、あなたのことを笑いぐさにしてね、

    だいたい、あなたがぼくを監獄に入れたがるのは、あの人のことでぼくに妬いているからだけじゃないですか、なにしろこのところはご自分があの女に言い寄って行かれるそうですからね、

    そいつもちゃあんとわかっているんですよ、やはりあの人が笑いながら話してくれましたからね、いいですか、あなたのことを笑いながら、話してくれたんですよ。

    さあ、お坊さま方、これはそういう人間なんです、放蕩息子に文句を言う父親がこのていたらくなんですよ! 

    立会人のみなさん、ぼくの怒りを許してください、

    ですがぼくは、この狸じじいがみなさん方をここへお呼びしたのは、スキャンダルのたねをつくるために相違ないと予感していたんです。

    ぼくは、もし親父のほうから手を差しのべてくれるようだったら、許してやるつもりで、許してやって、逆にこちらから許しを乞うつもりで出てきました! 

    しかし、いま親父は、たんにぼくひとりを辱しめただけじゃない、ぼくが尊敬の気持のあまりみだりにその名前を口にすることさえはばかっている高潔このうえない令嬢まで辱しめたんです、こうなった以上、たとえ実の父親であるとはいえ、この男のからくりいっさいを公然とあばいてやる気になったんです……」

    ドミートリイの「許してやるつもりでした」という言葉は本音だと思います。

    これほど父親にネグレクトされ、破廉恥な言いがかりをつけられても、心の底では父親を慕い、敬ってもいるんですね。そして、子供とは、そういうものです。ゆえに愛憎も深い。

    ところが、フョードルは興奮して、「決闘だ!」と騒ぎ立てます。

    ドミートリイはすさまじく眉(まゆ)をひそめ、なんとも言いあらわしようのない軽蔑の色を浮かべて父親のほうを見やった。

    「ぼくは考えていたんです……考えていたんです」彼はなぜか控え目な低い声で言いだした。「ぼくの魂の天使ともいうべきフィアンセといっしょに故郷に帰ったら、親父の老後を大事に見てやろうって。ところが来てみると、親父は手のつけられない色きちがいで、卑劣きわまりない道化役者なんですからね!」

    こんな父親でも、結婚したら、奥さんと二人で老後を見てやろうと考えていたのですよ。ドミートリイも、優しいですね。

    どうしてこんな人間が生きているんだ!

    ところが、フョードルは、ますます興奮し、カチェリーナとグルーシェンカを卑しめるような事を口にします。

    それから、ドミートリイさんよ、あなたもやはりあの《淫売》に婚約者のお嬢さんを見替えたところを見ると、あんたの婚約者もあれの靴の裏にも及ばない女だと考えたわけだろうが、さよう、あの淫売はそういう女なんでさあ!」

    「恥ずかしいことだ!」 ヨシフ神父が突然口をすべらした。

    「恥ずかしい、けがらわしいことです!」 終始無言でいたカルガーノフが、ふいにまっ赤になり、少年らしさの抜けきらぬ声お興奮にふるわせて叫んだ。

    どうしてこんな人間が生きているんだ!

    怒りのためにほとんど前後を忘れたようになって、ドミートリイがうつろな声で呻くように言うと、なにか奇妙なほど両肩をそびやかせたので、まるで猫背のような格好になった。

    「いや、教えてください、こんな男がこのうえ大地を汚すのを、許しておいていいものでしょうか」

    彼は老人を指さしながら、一同の顔を見わたした。彼のもの言いはゆっくりとしていて、よどみがなかった。

    お聞きになりましたか、お聞きになりましたか、お坊さん方、この父親殺しの言うことを

    フョードルはヨシフ神父に食ってかかった。

    「あなたの『恥ずかしいことだ』への返答がこれですよ! 何が恥ずかしいことです? あの《淫売》、あの《いかがわしい女》はですね、ひょっとしたら、ここで行いすましておられるあなた方、お坊さま方より、ずっと神聖なのかもしれませんですよ! 若いころに、環境にむしばまれて、堕落したかもしれないが、しかし『多く愛せり(注解参照)』(「ルカ福音書」第七章四十七節)ですからね、多く愛した女はキリストさまだってお許しになったんだ……」

    どうしてこんな人間が生きているんだ(原卓也訳では、『こんな男がなぜ生きているんだ!』」は、本作屈指の名台詞だと思います。

    バカ親に対する、子の失望、憤懣、やるせなさが、この一言に凝縮されているからです。

    子供は誰でも、立派で、慈悲深い親の元に産まれたいと願っています。

    でも、子供に親は選べません。

    ドミートリイも、優れた脂質を持ちながら、フョードルみたいな淫蕩父の元に産まれたがために、親戚をたらい回しにされ、生きる歓びよりも先に孤独を知りました。

    かといって、自分の父親を否定することはできません。「腐っても、親」「親あっての自分」だからです。

    ゆえに、ドミートリイは全身を振り絞るようにして言います。「どうしてこんな人間が生きているんだ」

    「死ね」でも、「殺す」でもない、憤懣やるかたない思いが、このひと言を生むのです。

    まあ、現代人でも、「なんでこんな人間がのうのうと部長の座に居るんだ」とか思いますけどね。

    それでも、親の死を願うことに変わりはありません。(参考 【20】 蛇が蛇を食い殺すだけ ~他人の死を希望する権利はあるのか?

    それに続く、「こんな男がこのうえ大地を汚すのを、許しておいていいものでしょうか(原訳では、「この上まだこんな男に大地を汚させておいていいもんでしょうか?」」という言葉も相成って、父親の死を願うドミートリイの荒ぶる心が露わになります。

    動画で確認

    ドミートリイが「どうしてこんな人間が生きているんだ」と口にし、一家の不幸を予感したゾシマ長老がドミートリイの足元に頭を下げる場面です。

    原作ではドミートリイが絶叫しているように見えますが、深く、静かに、怒りを吐き出すイメージです。

    カラマーゾフの兄弟 ドミートリイ こんな男を許せるのですか?

    お赦しくだされ! 何もかもお赦しくだされ!

    ドミートリイの「どうしてこんな人間が生きているんだ」という言葉に対し、フョードルは売り言葉に買い言葉で答えます。

    「お聞きになりましたか、お聞きになりましたか、お坊さん方、この父親殺しの言うことを

    フョードルはヨシフ神父に食ってかかった。

    「あなたの『恥ずかしいことだ』への返答がこれですよ! 何が恥ずかしいことです? あの《淫売》、あの《いかがわしい女》はですね、ひょっとしたら、ここで行いすましておられるあなた方、お坊さま方より、ずっと神聖なのかもしれませんですよ! 若いころに、環境にむしばまれて、堕落したかもしれないが、しかし『多く愛せり』(「ルカ福音書」第七章四十七節)ですからね、多く愛した女はキリストさまだってお許しになったんだ……」

    「キリストはそのような愛ゆえに許されたのではありませぬ……」温厚なヨシフ神父もさすがにこらえきれないで、思わずこう言った。

    「いいや、そのような愛のためですとも、例のあのほうの、お坊さん方、あっちのほうの愛のためなんでさあ! あなた方はここでキャベツ汁をすすって行ないすまして、それでもう神に仕える心義しい人だと思っていなさる! 小指みたいな<すなむぐり(注解参照)>を食されて、一日にすなむぐり一本あてで、そのすなむぐりで神さまを買収しようってお考えだ!」

    「あんまりだ、あんまりだ!」の声が、庵室の四方から起った。

    そうして、ドミートリイばかりか、神父までもが憤り、険悪になった時、にわかにゾシマ長老が立ちあがり、ドミートリイの足元に叩頭します。

    しかし、醜悪の極にまで達したこの一幕は、まったく思いもかけない形で中断された。長老がふいに席を立ったのである。

    長老の身の上を思い、一回のことを思って、恐ろしさにほとんど度を失っていたアリョーシャは、それでもどうにか長老の片手を支えることができた。

    長老はドミートリイのほうへ向かって歩きだし、そのすぐ前まで行くと、いきなり彼の前にがっくりとひざまずいた。

    アリョーシャは、長老が力つきて倒れたのかと思ったが、そうではなかった。長老はひざまずいたまま、ドミートリイの足もとへ礼式どおりの深々とした叩頭をした。

    それは明らかに意識的なもので、その額が床にふれさえしたほどであった。

    アリョーシャはすっかり驚いてしまって、長老が立ちあがろうとしたとき、手をかすのも忘れていた。

    長老の口もとに弱々しい微笑がかすかに浮かんだ。

    「お赦しくだされ! 何もかもお赦しくだされ!」客人たちに向かって四方に会釈しながら長老は言った。

    ドミートリイは、何秒かのあいだ、雷にでも打たれたように棒立ちになっていた。――おれの足もとに叩頭するなんて、いったいなんのことだ? だが、次の瞬間、いきなり「ああ、だめだ!」と一声叫ぶと、両手で顔をおおって、いっさんに外へ走り出た。そのあとを追うようにして、ほかの客たち一同も、狼(ろう)狽(ばい)のあまり、長老にいとまを告げ、会釈するのも忘れて、どやどやと部屋から出て行った。二人の修道司祭だけが、祝福を受けるためにもう一度長老のそばへ歩み寄った。

    「ああ、だめだ!」の部分で、ドミートリイが改悛の情をもった、良心的な人間だと分かります。平然と父親を殺すような人間であれば、ゾシマ長老が頭を下げても、己に恥など感じないからです。

    ドミートリイにとっても、フョードルにとっても、救われる道は『赦し』以外にありません。赦しとは、許可の「許す」と異なり、人の罪をも理解して、なおかつ、光に導く深い慈愛です。それが、互いの胸に去来するか否かで、人生も大きく違ってくるわけですね。

    あえて言うなら、「赦し」の感情を持っているのはドミートリイの方です。上述のように、「ぼくの魂の天使ともいうべきフィアンセといっしょに故郷に帰ったら、親父の老後を大事に見てやろうって」という言葉も本心でしょう。決して金目当てではありません。

    それでも、人間の忍耐には限界がありますから、ドミートリイの短気が良心の壁を破って、罪を犯すかも知れないと危惧したのでしょう。ゾシマ長老は、ドミートリイの足元に叩頭して、「お赦しくだされ! 何もかもお赦しくだされ!」と願います。フョードルとドミートリイ、どちらが悪いかと言えば、明らかにフョードルの方ですが、ドミートリイが一歩下がって、怒りの矛先を収めれば、少なくとも悲劇は防げるからです。

    ゾシマ長老は、ドミートリイに対して「お赦しください」と言いますが、これはその場にいる全員、しいては、人類全体に対する願いですね。皆が互いに赦し合えば、世界は楽園になるからです。

    ちなみに、似たような場面が、『罪と罰』にも、二度、ありました。

    一度目は、ソーニャの篤い信仰心に打たれたラスコーリニコフが、彼女の足に接吻し、「僕はお前に頭を下げたのじゃない。 僕は人類全体の苦痛の前に頭を下げたのだ」を涙を流す場面。

    二つ目は、ラスコーリニコフの老婆殺しを知ったソーニャが、「お立ちなさい! 今すぐ行って、四辻にお立ちなさい。 そして身を屈めて、まずあなたが汚した大地に接吻なさい。 それから、世界じゅう四方八方に頭を下げて、はっきり聞こえるように大きな声で、 『私は人を殺しました!』とおっしゃい! そうすれば神様がまたあなたに命を授けてくださいます。 行きますか? 行きますか?」と言う場面。

    昔から、高慢の罪は、「頭が高い」と言います。

    頭を下げて、大地に接吻することは、自分を一番低い位置に置き、高慢を手放すことでもあります。

    キリスト教における『罪(原罪)』とは、神のように賢くなろうと、知恵の実を口にしたことから始まりますから、理に適っていますね。

    その後、フョードルはきょとんとして、「どうしてまた足もとに額(ぬか)ずいたりしたんだろう、何かの象徴ですかな?」とおとなしくなります。

    その後、一行は僧院長の招きで食事に向かいますが、フョードルは食事を拒否して、一行から離れます。(しかし、その後、気が変わり、食事の場に押し掛けて、またも暴言を吐きます。それが、『【14】 現代は自由主義のご時世、汽船と鉄道の時代ですぜ! 時代の変化の先の『救済』とは ~フョードルの逆襲』です)

    カラマーゾフの兄弟 ゾシマ長老 頭を垂れる

    一口メモ

    ゾシマ長老の叩頭については、『第Ⅵ編 ロシアの修道僧 / 第1章 ゾシマ長老とその客たち』で、瀕死の長老がアリョーシャに兄たちのことについて訊ね、アリョーシャが「その兄(ドミートリイ)とはきのう会っただけで、きょうはどうしても探し出せませんでした」と告げると、

    いそいで見つけるがよい、あすも行くのじゃ、あとのことはほうり出しても、いそぐがよい。ことによると、まだいまなら恐ろしいことが起るのを防げるかもしれぬ。わたしはきのう、あの人の大きな未来の苦しみの前に頭を下げたのじゃ

    と答えています。

    ドミートリイが父を赦すことなく、憎しみを持ち続けていれば、いずれ実の父を手に掛けて、自分も、父も、不幸のどん底に突き落とされることを予感しています。

    この後、ゾシマ長老は亡くなり、アリョーシャは絶望の後、信仰を新たにして、兄に手を差しのべようとしますが、結局、ドミートリイと再会することは叶わず、悲劇に突っ走っていきます。

    ドミートリイにしてみたら、一方的に父を赦すなど、合点がいかないかもしれませんが、それでも、そうする他、救いの満ちはなかったと思います。

    いろんな意味で、ここが転機だったのですが、長老やアリョーシャの願い叶わず、本当に残念ですね。

    動画で確認

    ゾシマ長老の叩頭は、2007年版TVドラマの方が忠実ですが、個人的には、記事前半で紹介している、1967年版映画の方が好きです。

    https://youtu.be/-YcFzj5MyMo?t=1633

    許しておあげなさい ドミートリイに懇願するゾシマ長老

    このパートを縦書きPDFで読みたい方は下記リンクからどうぞ。PC・タブレット推奨。閲覧のみ(13ページ)
    Google Driveで『どうしてこんな人間が生きているんだ!』を読む 

    江川卓による注解

    シラーの『群盗』

    イワンを善良な長男カール・モール、ドミートリイを邪悪な弟フランツに喩える。

    1781年作のシラーの戯曲。ドイツのモール伯爵家の長男カールは弟フランツの陰謀で父から勘当され、盗賊団の首領になるが、やがて望郷の念に耐えかねて帰郷、弟の自殺後、弟に幽閉されていた老父を救い出すが、父は驚きのあまり失神してこときれる。ドストエフスキーは十歳のとき、カールを演じたモチャーロフの名演に最初の演劇的感動をを得たと伝えられる。兄ミハイルにすすめてこの戯曲のロシア語訳を出させたりもしている。

    群盗 (岩波文庫) 群盗 (岩波文庫)

    みだりにその名前を口にする

    フョードルがカチェリーナのことを「貞操堅固な女性」と揶揄したことに対して、ドミートリイの反論。カチェリーナは父親の借金のカタをつける為にドミートリイの所に身売りに出掛けた過去がある(ドミートリイは指一本触れずに彼女を帰したが)

    出エジプト記第二十章七節に「汝の神エホバの名をみだりに口にあぐべからず」とあり、ここでは「みだりに」という言葉が「フスーエ」と教会スラヴ語訳聖書と同じく古めかしい言い方になっている。なお、ドミートリイはこの言葉を予審判事による訊問のさいにもくり返す。

    ハンカチを隔ててだ

    フョードルがドミートリイに決闘をけしかける。
    「もし貴様がおれの息子でなかったら、いますぐにでも決闘を申し込んでやるところだわい……武器はピストル、距離は三歩……ハンカチを隔ててだ」

    シラーの「たくみと恋」で、フェルジナンドが宮内官に決闘を申し込む場面で、ハンカチの一端を持たせ、自分はもう一端をにぎり、その距離で決闘を行なおうとする。

    多く愛せり

    フョードルがグルーシェンカのことを「いかがわしい女」と揶揄し、「若いころに、環境にむしばまれて、堕落したかもしれないが、しかし『多く愛せり*51』「ルカ福音書」第七章四十七節ですからね、多く愛した女はキリストさまだってお許しになったんだ」と言い放つ。

    イエスがパリサイ人の家で食事をしたとき、一人の罪の女が泣きながらイエスの足もとに来て、涙でその足を濡らし、髪の毛で拭い、その足に接吻して香油を塗ったが、イエスは彼女を指して、「この女は多く愛したゆえに、その多くの罪は赦されている」と言ったという。ここのフョードルの言葉では、「環境にむしばまれて」云々も、ドストエフスキーが批判的に見ていた環境万能論の立場をもじっている。ドストエフスキーは一八七六年五月の『作家の日記』で、情人の制裁を殺そうとしたカイーロワという女性の弁護に当ったウーチンがこの聖句を引用したことを「冒涜だ」と述べているが、同時に少年たちの間に聖書のこの一句をまさしくフョードル的な意味で理解しよとうする風潮があったことを指摘している。

    すなむぐり

    上記に反論した神父らに、フョードルは「そのような愛(性愛)のためですとも、あなた方は小指みたいなすなむぐりを食されて……」と罵倒する。
    原卓也訳では、「ウグイ」と訳されている。

    日本でカマツカのことをすなむぐりというが、ロシアのものは習性などは似ているが、日本のものより小型で、貧弱で役に立たぬ魚の代名詞のように使われる。修道僧は獣肉を食べることはしなかったが、魚肉を食べることは赦されていた。

    教会の暦

    フョードルの醜態に幻滅したミウーソフが「ぼくはあなたの親戚じゃない」と言うと、フョードルは「あなたをかっかさせようと思って、わざと言ってみたんですよ、とにかくあなたは親戚あつかいされるのがおきらいですからね。でもね、いくらごまかそうたって、親戚にはちがいないんですぜ、教会の暦でだって証明してみせまさあ」と言い放つ。

    暦の形で聖者の名や祭日を記した暦で、これを使って親戚関係を証明することは不可能。
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    原卓也訳 「こんな男がなぜ生きているんだ!」

    「それじゃ、親の祝福は何になるんだ? わたしが呪ったら、そのときはどうなる?」

    「恥知らずの偽善者め!」 ドミートリイは狂ったようにどなりつけた。

    「それが父親に、父親に向かって言う言葉か! ほかの人が相手だったら、いったいどうなるんだろう? そうなんですよ、みなさん。この待ちに貧乏ではあるが、立派な退役大尉がいるんです。不運に見舞われて、軍務を退かされたのですが、といっても公表されたわけでも、軍法会議にかけられたわけでもなく、名誉は立派に保ってのうえで、今は大人数の家族を背負いこんで苦しんでいるのでございます。ところが三週間前、わがドミートリイ君が飲屋でこの大尉の顎ひげをふんづかみ、顎ひげをつかんで往来に引きずりだすなり、公衆の面前でさんざんに殴りつけたんですよ。それもこれも、その人がちょっとした用件でわたしの史的な代理人をつとめたというだけの理由でですからね」

    「嘘です、そんなことはみんな! うわべは本当でも、中身は嘘っぱちです!」 ドミートリイは怒りに全身をふるわせていた。

    「お父さん! 僕は自分の行為を弁解したりしませんよ。そう、みなさんの前で正直に言いましょう。たしかに僕はその大尉に対して野獣のような振舞いをしました。今ではあの野獣みたいな怒り方を後悔して、自分自身がやりきれないくらいです。だけど、あんたのあの大尉は、あんたの代理人とやらは、あんたが妖婦とか表現した当の女性のところへ行って、あんたの代理人とやらは、あんたが妖婦とか表現した女性のところへ行って、あんたの頼みだと言ってこんな提案をしたじゃありませんか。

    もし僕が財産の清算であまりうるさくつきまとうようだったら、あんたの手もとにある僕の手形を彼女が引きとって、その手形をたねに僕を刑務所へぶちこんでしまえるように訴訟を起してくれって。それからあんたは今、僕があの女性にぞっこん参っていると、非難したけれど、その実、僕を誘惑するように彼女を焚きつけたのは、あんた自身じゃないですか!

    なにしろ彼女が僕に面と向って自分から話してくれましたよ、あんたを笑いものにしながらね!あんたが僕を刑務所にぶちこみたがっているのは、僕に嫉妬してるからなんだ、あんた自身が彼女に岡惚れして言い寄ってるからじゃありませんか。これもやっぱり僕にはわかってるんだ。やはり彼女があんたを笑いものにしながら、いいですか、笑いものにしながら話してくれたんですよ。

    どうですか、神父さまたち、これが放蕩息子を難話している父親なんですよ! みなさん、僕が怒ったのを赦してください。でも僕は、もし父が手をさしのべたら赦し、僕も赦しを乞うつもりで来たのです!  でも、父がたった今、僕だけではなく、僕が敬虔の念からみだりにその名を口にすることさえはばかっている高雅な令嬢のことまで侮辱したために、たとえ父親であろうと、その企みを残らずみんなの前にあばこうと決心したんです!」

    江川訳とかなりニュアンスが異なりますね。

    「僕は……僕は」低い抑えた声で彼は言った。「心の天使であるいいなずけといっしょに故郷へ帰って、父の老後を慰めようと思っていたのに、見れば父は淫蕩なひひ爺で、下劣きわまる道化役者にすぎなかったんです!」

    「決闘だ!」老人は息をあえがせ、一言ごとに唾をとばしながら、またわめきたてた。

    「それからミウーソフさん、いいですかね、おそらくあんたの一族には、たった今あんたが厚かましくも牝犬よばわりしたあの女ほど高潔で誠実な女性は、ええ、誠実な女性はさ、おそらく一人もいないでしょうよ、過去にだって一人もいなかったにちがいないさ。それから、ドミートリイ君、君だっていいなずけをそんな《牝犬》に見かえたところを見ると、つまり、いいなずけはあの女の踵ほどの値打ちもないと、君自身が判断したというわけだ、立派な牝犬じゃないか!」

    「恥を知りなさい!」 突然イォシフ神父が叫んだ。

    「恥を知りなさい、みっともない!」 収支黙っていたカルガーノフが、青年らしい声を興奮にふるわせながら顔を真っ赤にして、ふいにどなりつけた。

    こんな男がなぜ生きているんだ!

    もはやほとんど怒りに狂ったようになり、なにか以上に肩をそびやかし、そのためほとんどせむしに近い恰好になったドミートリイが低い声で唸るように言った。「いや、教えてください、この上まだこんな男に大地を汚させておいていいもんでしょうか?」

    「ききましたか、え、神父さんたち、父親殺しの言うことをききましたかね?」 フョードルはイォシフ神父に食ってかかった。 ≪中略≫

    「いいえ、そういう愛のためです、まさしくそういう愛のためですぞ、神父さん! あんた方はここでキャベツなんぞで行いすまして、自分たちこそ敬虔

    江川卓 → ヨシフ神父
    原卓也 → イォシフ神父

    江川卓 → 淫売
    原卓也 → 牝犬 (原訳の方が、禍々しいイメージですね)

    江川卓 → すなむぐり
    原卓也 → ウグイ

    でも、「どうしてこんな人間が生きているんだ!」の個所は、原卓也訳の「こんな男がなぜ生きているんだ!」の方がしっくりきます。

    誰かにこっそり教えたい 👂
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