第Ⅴ編 ProとContra ~肯定と否定– 章立て –
ProとContraは「肯定と否定」のこと。
イエス・キリストに現実を訴えかける、有名な大抒情詩『大審問官』を中心に、イワンとアリョーシャのキリスト教観が炸裂する、本作の要のようなパートです。ここだけでも短編小説と成立するほど素晴らしいので、ファンは必読です。
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【35】 悪魔は迷う心にささやく ~スメルジャコフとイワンの破滅
「旅立つべきか、とどまるべきか」思い倦ねるイワンにスメルジャコフはフョードルとグルーシェンカの秘密の合図、首から提げた3000ルーブリの封筒について話し、「わたしがあなたの立場でしたら、何もかもほうりだして、さっさと行ってしまう」とそそのかす。コラム『悪魔とは何か』と併せて。 -
【34-3】 『大審問官』 イエスの沈黙の意味 ~アリョーシャとイワンの別れ
料亭≪みやこ≫で「神はあるのか、ないのか」について語り合った後、イワンはアリョーシャに別れを告げて旅に出ようとする。イワンの胸の内を知ったアリョーシャは否定の気持ちと愛が両立するわけがないと案じ、自分の居場所はないと感じるイワンに愛情を込めてキスをする。 -
【34】 大審問官 悪魔の現実論を論破せよ ~アリョーシャの接吻の意味
マタイ福音書「悪魔の三つの誘惑」を元に、大審問官がイエスに現実の矛盾を問い質す名場面。『イエスの接吻が意味すること』『イワンこそ現代人の葛藤』『心が死ねば肉体も死ぬ』『人間とは弱く卑しいもの』『大審問官の意味を探しても答えはない』等。江川卓『謎解きカラマーゾフの兄弟』の解説を交えて紹介。 -
【33】 神さまに天国への入場券をお返しする ~子供たちの涙の上に幸福を築けるか?
イワンは子供たちへの虐待を引き合いに出し、無垢な涙の上に幸福の建物を築けるかと問いかける。神は認めても、神の創った世界は認めない。だから天国への入場券をつつしんで神さまにお返しする、というイワンの心情が綴られた名場面。 -
【32-2】 僕は神を認めないんじゃない、神の創った世界が認められないんだ
アリョーシャと「神はあるのか、ないのか」と論議を交わすイワン。「ぼくは神を認める。だが神の創った世界は認められない」と断言する。一方、神に救われたがっているイワンの心情が垣間見える名場面の序章。 -
【32-2】 論理以前に生を愛する「ぼくは生きたい、論理に逆らってでも生きたい」
アリョーシャは料亭≪みやこ≫で一人で食事するイワンと落ち合い、将来のことやカチェリーナのことを語り合う。二人の兄弟らしい情愛やイワンの若々しい心情が感じられる名場面。 -
【31】現代のジョーカー スメルジャコフの怨念 ~卑しい生まれと認められぬ存在
痴れ者リザヴェータから生まれたスメルジャコフは「父親はフョードル」という噂から、自分もカラマーゾフ兄弟の一員ではないかという思いを抱いている。優れた才能を姫ながら、卑しい出自ゆえに蔑まれるスメルジャコフの鬱屈した心理を描く。 -
【30】 あなたの手紙も一通だって読んだりしないわ ~嘘つきリーズの危険な誓い
リーズはアリョーシャに恋文を書き送り、アリョーシャはその想いを受け入れて、結婚の約束をする。しかし、リーズも、ホフラコワ夫人も、立ち聞き、盗み読み、大好きの支配的な性格で、アリョーシャの結婚生活も破綻するのが目に見えている。アリョーシャの破滅の引き金を引く、リーズの暗い性格が垣間見える場面。 -
【29】持てる者の驕りと弱者への気づかい ~アリョーシャとリーズの婚約より
アリョーシャはホフラコワ夫人の屋敷で、リーズとスネギリョフ二等大尉の事を語り合う。カチェリーナから託された200ルーブリの見舞金をスネギリョフは受け取ろうとしなかったからです。しかしアリョーシャはその心情を理解し、「僕たちは対等であるべきです」と考えを新たにする。
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