江川卓『カラマーゾフの兄弟』は滋賀県立図書館にあります 詳細を見る

あらすじとキャラクター紹介 【カラマーゾフの兄弟】

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ここでは『カラマーゾフの兄弟』のあらすじとキャラクターを紹介しています。
淫蕩父フョードルと長男ドミートリイの間に何があったのか、3000ルーブリ問題はどこから生じたのか、時系列で紹介しています。ネタバレしますので、結末を知りたくない方はご注意下さい。(結末はアコーディオン式で隠してます)

目次 🏃‍♂️

あらすじ(メインストーリー)

大地主フョードル・カラマーゾフは、一度目は野心から、二度目は好奇心から、愛のない結婚を繰り返し、最初の妻との間にドミートリイ、二番目の妻との間にイワン、アリョーシャ(アレクセイ)をもうける。しかし、フョードルは三人の息子にまったく関心をもたず、ドミートリイは最初の妻の親族ミウーソフ家に、イワンとアリョーシャは二番目の妻の親族ボレーノフ家に引き取られ、ドミートリイは軍人、イワンは大学生、アリョーシャは見習い僧になる。

ドミートリイは富裕な父親の存在を知ると、自分も金持ちと勘違いして散財し、無一文になるが、父フョードルは息子のために一銭たりと援助する気は無い。しかも、情婦グルーシェンカの愛を得ようと、ドミートリイと争い、互いに憎悪をつのらせる。

ドミートリイは、貴族令嬢カチェリーナと婚約していたが、カチェリーナから預かった3000ルーブリの大金をグルーシェンカとの遊びに使いこみ、返済できずにいた。カチェリーナと婚約解消し、グルーシェンカと結婚する為に、どうしても3000ルーブリを返済したいが、金の工面ができず、どんどん追い詰められていく。

やがてフョードルに嵌められたと気付いたドミートリイは激怒して、杵を片手にカラマーゾフ家に忍び込み、父親を撲殺しようとするが、止めに入った忠僕グリゴーリイを殴ってしまい、その血を見て我に返る。ドミートリイは犯行を思い止まり、グルーシェンカが滞在するモークロエに出かけて、想いを遂げるが、突然、警察が踏みこんで、ドミートリイを逮捕する。

結末を読む

父親殺しの嫌疑をかけられたドミートリイは、必死で無実を訴えるが、真犯人であるスメルジャコフが自死した為に、ますます不利になる。しかも、婚約者カチェリーナに宛てた手紙――事件の二日前、ドミートリイが居酒屋で酔ったはずみで書いた「父を殺してでも3000ルーブリを手に入れる」という文言が決め手になり、有罪判決が下される。

しかし、ドミートリイはカチェリーナを許し、有罪判決を受け入れ、シベリアに行く決意を固める。アリョーシャは救出計画に動き、イワンは激しい良心の呵責から病気になるが、カチェリーナの看病で、少しずつ回復する。(元々、カチェリーナはイワンと惹かれ合っている)

アリョーシャは、ドミートリイのトラブルが元で知り合った「少年たち」と、一生涯、手を取り合っていこうと誓いを立てて、「第一の小説」は終わる。

「第二の小説」は成長した少年たちと社会運動に身を投じ、最後は皇帝暗殺の首謀者として逮捕され、銃殺刑に処される――と言われている。

キャラクター紹介

アリョーシャ(アレクセイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ)

本作の主人公。カラマーゾフ家の三男。フョードルと第二の妻ソフィヤの間に生まれた。
天真爛漫な青年で、「理想の進路を示してくれた」という理由から神の道を志す。高徳の僧、ゾシマ長老を尊敬し、一生を捧げる覚悟だったが、カラマーゾフ家の問題を知った長老に「父と兄たちの側にいなさい」と諭され、僧院を出る。幼なじみのリーズと婚約。

カラマーゾフの兄弟 アリョーシャ
ドミートリイ・カラマーゾフ(ミーチャ)

カラマーゾフ家の長男で、短気な激情家。最初の妻アデライーダの間に生まれるが、三歳の時に、アデライーダは貧乏な教師と駆落ちし、父フョードルにも育児放棄されて、母方の親族をたらい回しにされる。軍関係の学校に進学し、軍人になるが、フョードルの財産をあてにして放蕩し、無一文となる。
中佐(大隊長)の公金使い込みを救済した事がきっかけで令嬢カチェリーナと婚約するが、商人の情婦グルーシェンカに一目惚れし、カチェリーナから預かった3000ルーブリを遊びで使い込む。
守銭奴の父を憎悪し、グルーシェンカの愛を争う。

ドミートリイ アリョーシャ カラマーゾフの兄弟 廃屋での語らい
イワン・カラマーゾフ

カラマーゾフ家の次男で、クールな無神論者。第二の妻ソフィヤとの間に生まれるが、アリョーシャと一緒にボレーノフ家に引き取られ、不幸な生い立ちから心をこじらせる。人一倍、鋭敏で、潔癖な性格から、神の義を疑うようになり、アリョーシャと「神はあるのか」をめぐって議論を戦わせる。心秘かにカチェリーナを愛し、カチェリーナもイワンを慕っているが、ドミートリイの存在が邪魔をして、互いに素直になれない。父親殺しを予感しながらも、父を見捨てて、モスクワに旅立ったことから、良心の呵責に苛まれ、悪魔の幻影を見るようになる。

カラマーゾフの兄弟 イワン 神はいません
フョードル・カラマーゾフ

富裕な大地主。放埒な性格ながら金勘定には抜け目なく、最初の妻アデライーダの持参金を元手に裕福になる。悪ふざけの好きな淫蕩オヤジだが、意外に知性的で、アリョーシャを恃みにしている。ドミートリイに当てつけるように、3000ルーブリでグルーシェンカの歓心を買おうとするが、何ものかによって撲殺される。

フョードル・カラマーゾフ
令嬢カチェリーナ

気位の高い貴族令嬢。父(大隊長中佐)の公金使い込みを救済するため、身売りを覚悟でドミートリイの下宿に赴くが、ドミートリイが無条件で無記名債権を渡してくれたことから彼の男らしさに惹かれ、婚約する。だが、ドミートリイはグルーシェンカに心を移し、カチェリーナの愛憎もひとしおである。一方、知的なイワンに心惹かれ、秘かに愛し合うが、カチェリーナは意地でもドミートリイと婚約解消したくない。激しい葛藤の末、最後にはドミートリイを破滅に追い込む。

カラマーゾフの兄弟 カチェリーナ
情婦グルーシェンカ

ドミートリイが想いを寄せる官能的な美女。ポーランド人将校の婚約者に捨てられた後、裕福な町長サムソーノフの囲い者となる。待ちの住民には淫売女と罵られ、フョードルにも思わせぶりな態度を取るが、最後にはドミートリイの愛に気付く。本名は、アグラフェーナ・アレクサンドロヴナ。

グルーシェンカ カラマーゾフの兄弟
ゾシマ長老

町中の信徒に慕われる、高徳の僧。アリョーシャの精神的指導者でもあり、僧院を出て、父と兄たちの側にいるよう勧める。死後に奇跡を期待されるが、何も起こらず、アリョーシャもショックを受けるが、信仰を新たにし、生涯の心の支えとなる。

カラマーゾフの兄弟 ゾシマ長老  そう信じていなあるなら大いに幸福が訪れる
スメルジャコフ

カラマーゾフ家の料理人。痴れ者リザヴェータがカラマーゾフ家の風呂場で産み落とした子。父はフョードルと噂されている。忠僕グリゴーリイに育てられるが、呪われた生い立ちゆえに捻くれ者になる。無神論者のイワンを尊敬している。

カラマーゾフの兄弟 スメルジャコフ
忠僕グリゴーリイ

カラマーゾフ家の忠実な召使い。頑固で、禁欲的な性格だが、主人のフョードルに真心から尽くす。育児放棄された三人の息子を世話し、父なし子のスメルジャコフを我が子として育てる。妻のマルファと召使い小屋に住んでいる。

忠僕グリゴーリイ カラマーゾフの兄弟
ラキーチン

アリョーシャと同年代の野心的な青年。神学校出身だが、出自にコンプレックスを抱いている。カラマーゾフ家の事件に関心を寄せ、文筆によって出世の糸口を掴もうとするが、公判でグルーシェンカに出自をばらされ、大恥をかく。

後半でメモを取るラキーチン

物語 ~カラマーゾフ一家に何があったのか

『カラマーゾフの兄弟』の話の流れは次の通りです。

前半・・父フョードルと長男ドミートリイの金銭問題、カチェリーナとグルーシェンカをめぐる三角関係

後半・・フョードル殺しとミーチャの逮捕、裁判から判決まで

あらすじ① カチェリーナとの出会い~3000ルーブリ問題

カチェリーナとの出会いから3000ルーブリの使い込み、フョードルとの対立までを時系列で解説しています。

STEP
カチェリーナの父親が公金4500ルーブリを着服して返済不能に陥る

カチェリーナの父は、ドミートリイの所属する国境守備大隊の中佐であり、公金4500ルーブリをトリーフォノフという町商人に浮き貸しするが、トリーフォノフは返金に応じず、追いつめられた中佐は猟銃自殺を図る。

STEP
カチェリーナは金を工面するため、ドミートリイを訪問する

カチェリーナは哀れな父を救うため、肉体を捧げる覚悟でドミートリイの下宿を訪れるが、ドミートリイは彼女の美しさに心打たれ、5000ルーブリの無記名債権を黙って差し出す。

STEP
カチェリーナは将軍夫人から8万ルーブリを受け取り、ドミートリイに返済する

カチェリーナは、親戚の将軍夫人から「持参金」として8万ルーブリを受け取り、カチェリーナはその中から4500ルーブリを都合して、ドミートリイに返済する(いったん金銭問題は解決)

STEP
カチェリーナとドミートリイが婚約する

この出来事をきっかけに、カチェリーナはドミートリイに愛を打ち明け、婚約の運びとなる。

STEP
イワンがドミートリイの代理でカチェリーナを訪問する(恋の始まり)

ドミートリイは事の顛末を弟イワンに手紙で報せ、イワンを代理としてカチェリーナの元に差し向ける。
イワンはカチェリーナに好意を抱き、カチェリーナもイワンに心惹かれる。

STEP
フョードルがドミートリイ名義の手形を発行して、グルーシェンカに渡す

フョードルはドミートリイを金銭的に締め上げる為、ドミートリイの名義の手形を発行し、高利貸しで儲けるグルーシェンカに渡す。

STEP
ドミートリイはグルーシェンカを殴りに行って、恋に落ちる

激怒したドミートリイは、グルーシェンカを殴りに行くが、彼女の曲線美に一目惚れする。

STEP
ドミートリイはカチェリーナから3000ルーブリを預かる(私用)

ドミートリイはカチェリーナから「姉のアガフィーヤに郵送して欲しい」と3000ルーブリを預かる

STEP
ドミートリイはグルーシェンカと豪遊し、3000ルーブリを使い果たす

ドミートリイはカチェリーナから預かった3000ルーブリでグルーシェンカと豪遊し、返金不能に陥る。

STEP
グルーシェンカと結婚するため、カチェリーナに3000ルーブリを返金したい

ドミートリイはカチェリーナに3000ルーブリを返金し、婚約解消したいが、金を工面することができない。

STEP
フョードルは3000ルーブリでグルーシェンカの気を引こうとする

フョードルは「自分の所に来てくれたら、3000ルーブリをあげる」とグルーシェンカを誘い、グルーシェンカもまんざらではない。フョードルは3000ルーブリの札束を大封筒に入れて、首からさげて持ち歩き、これが事件の発端となる。

STEP
ドミートリイは金も女も失うのではないかと焦っている ←今ココ

ドミートリイはどうしても3000ルーブリを工面することができず、父を殺してでも……と思い詰めている。

あらすじ② ゾシマ長老の死~ドミートリイの逮捕

STEP
ゾシマ長老が亡くなる

アリョーシャの精神的指導者であるゾシマ長老が亡くなる。死後、奇跡が起きると期待されていたが、遺体は普通に腐り始め、信徒は騒ぎだし、アリョーシャも愕然とする。

STEP
アリョーシャがグルーシェンカを訪ねる

ゾシマ長老の死で信仰心が揺らいだアリョーシャはラキーチンに誘われ、グルーシェンカの所に行く。ラキーチンはアリョーシャを堕落させるつもりだったが、グルーシェンカとの心の触れ合いを通じて、落ち着きを取り戻す。僧院に戻ったアリョーシャは祈りの中でゾシマ長老と語り合い、真の信仰に目覚める。
一方、グルーシェンカは、昔の婚約者のポーランド人が戻ってきたと聞きつけ、モークロエに出かける。

STEP
ドミートリイが父親殺しを決意する

ドミートリイは3000ルーブリの工面に本葬するが、誰の援助も得られず、その上に、グルーシェンカが父フョードルの所に行ったと勘違いして、ついに逆上。杵を掴んで、カラマーゾフ家に向かう。

STEP
誤って忠僕グリゴーリイを殴り倒す

ドミートリイは父フョードルの窓際で待ち伏せ、窓から顔を出したフョードルを殺そうとするが、異変に気付いて止めに入った忠僕グリゴーリイを思わず殴ってしまい、グリゴーリイの流血を目にして我に返る。

STEP
グルーシェンカを追って、モークロエに行く

グリゴーリイを殺してしまったと思い込んだドミートリイは、この世の名残に、グルーシェンカに会いに出かけ、明け方に自死を試みるが、グルーシェンカの愛に救われ、思い止まる。

STEP
ミーチャが逮捕される

グルーシェンカと愛を確かめ合ったのもつかの間、警察が踏みこんで、その場で逮捕される。忠僕グリゴーリイは一命を取り留めたが、父フョードルは誰かに撲殺され、首からさげていた3000ルーブリも奪い取られていた。警察はミーチャの犯行と断定し、裁判にかける。

メインの話は非常にシンプルなのですが、その合間に「少年たち」「ゾシマ長老の回想録」イワンの大抒情詩「大審問官」など、本筋とは無関係なエピソードが随所に盛り込まれている上、政治論や宗教談義が多く、基礎知識がないと、何のことか、さっぱり分からないため、途中で投げ出したくなるんですね。

しかし、大筋が分かれば、一つ一つの章を「独立した短編(談義)」として味わうことが可能ですし、全体が「第二の小説」の大きな伏線になっている事が分かります。(少年たちのエピソードやアリョーシャの生き様)

興味のある方は、当サイトのコラムや江川氏の注解を参考にして下さい。

カテゴリー

『カラマーゾフの兄弟』が分かりにくいのはドストエフスキーのせい?

『カラマーゾフの兄弟』を読み始めても、途中で挫折しやすいのは、主軸となる父親殺しの他に「少年たち」「ゾシマ長老の回想録」「大審問官」など、本筋とは無関係なエピソードが随所に盛り込まれ、起承転結が見えにくいからだと思います。同じ長編でも、『風と共に去りぬ』や『レ・ミゼラブル』のような大河ドラマの方がはるかに分かりやすいです。

『カラマーゾフの兄弟』の読み方 / 長大な皇帝暗殺物語の序章として ~良質な翻訳で理解度も変わるでも述べているように、本作は二部構成の未完の大作であり、私たちが「カラマーゾフの兄弟」と呼んでいる「第一の小説」は、長大な物語の、ほんの序章に過ぎません。そして、その中に、「第二の小説」(幻の続編)の伏線となる少年たちのエピソードやキリスト教との関わり、婚約者リーズや野心家ラキーチンなど、「父親殺し」とは直接関係のない要素が散りばめられているため、話が飛び飛びに感じられるからです。

本来、これらのエピソードは「第二の小説」で回収され、「なるほど、納得」で終わるはずだったのですが、ドストエフスキーが急逝して、メモも草稿も残されてないため、「少年たち」はどうなったのか、アリョーシャとリーズは本当に結婚したのか、誰にも分かりません。他にも、ここまで書く必要があったのか、と感じるような部分はたくさんあります。でも、それは、全体を知らないからで、もし「第二の小説」が執筆されて、全編を通して読むことが出来たら、「ああ、なるほど」と納得したでしょう。

途中で訳が分からなくなっても、落ち込まないで下さい。それはあなたの能力ではなく、ドストエフスキーのせいかもしれません。全部書き上げる前に、急逝してしまったので(草稿も残さずに)(T_T)





誰かにこっそり教えたい 👂
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