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【8】 ゾシマ長老とロシアの農婦 ~神は罪を犯した者を、罪のままに愛してくださる
高徳の僧ゾシマ長老に救いを求めて、貧しい農婦が次々に訪れる。彼女らはゾシマ長老の優しい言葉に癒やされ泣いて感謝する。当時の農村(特に女性)の不幸な境遇や貧しさが窺える印象的なパート。ロシアの農奴制と改革への動きと併せて。 -
『罪と罰』 名言と解説(米川正夫訳) ~ラスコーリニコフの非凡人思想
超個人主義に徹する貧しい大学生ロジオン・ラスコーリニコフは、『人間は凡人と非凡人とに分かれ、非凡人は既成道徳をも踏み越える権利を有する』 『一つの些細な犯罪は、数千の善事で償われる』という論理のもと、強欲な高利貸の老婆を殺害し、奪った金を有効に使おうとする。不朽の名作を米川正夫訳で紹介。読解におすすめの江川卓「謎解き 罪と罰」も併せて。 -
漫画『DEATH NOTE』 なぜ人を殺してはいけないのか ~ドストエフスキーの『罪と罰』から考える
DEATH NOTEによって死神の力を手に入れた優等生・夜神ライトは、世直しと称して悪人の削除を繰り返すが、最後は手当たり次第に邪魔な人間を抹殺する大量殺人犯となる。「非凡な人間は法をも超える権利を有する」というドストエフスキーの『罪と罰』の世界観を交えながら、人が一方的に人を裁くことの危うさを説くコラム。『 優れた人間が悪い人間を削除していい、という考え方』『ライトの考えは独裁と同じ』『裁きは神の領域 ~神だけが本当の善悪を知っている』 -
【5】リアリストは自分が信じたいものを信じる ~アリョーシャの信仰とゾシマ長老
自身の意思によって神の道に進んだアリョーシャは高徳の長老ゾシマを心から慕い、奇跡を待ち望む。アリョーシャの信仰心と『聖トマスの不信』、ロシアの長老制度と奇跡に関するコラム。 -
【19】「神はあるのか」「いいえ、ありません」「イワンのほうが正しいらしいな」
カラマーゾフ家に帰ったアリョーシャをフョードルは歓迎し、イワンとテーブルを囲んで歓談する。「神はあるのか」という有名な問答をキリスト教の『復活』に喩えて解説。イワンとアリョーシャの違い、現実主義者のフョードルの知性が感じられる名場面。 -
【18】 スメルジャコフと悪魔 ~ 無神論と反キリストの違い
調理係のスメルジャコフは不幸な生い立ちから拗けた人間に育つ。忠僕グリゴーリィは信心深い子に育てようとするが、屁理屈ばかり並べて、聖書の言葉を素直に受け取ろうとしない。「悪魔=誘惑する者」のスメルジャコフの内面と信心の本質について語られる場面。 -
江川卓の『謎とき 罪と罰』 ~「罰とは何か」「ラスコーリニコフとソーニャの関係」「心情の美しさ ~文学者に恋をして」
ドストエフスキーの解説本『謎とき 罪と罰』より「罰とは何か」「ラスコーリニコフとソーニャの関係」について江川氏の見解を紹介。刑法やキリスト教、ロシア語の言い回しや部屋の描写などから作品に込められたメッセージを読み解く。「はじめに」に記された高校時代の思い出も秀逸。ドストエフスキーと『罪と罰』がもっと好きになるファン必読の書。 -
【6】 僧院の『薔薇の谷間』とゾシマ長老の女好き ~薔薇は何を意味するのか
父フョードルと長男ドミートリイの金銭問題を解決するため、高徳の僧ゾシマ長老の仲裁の元、家族会議が開かれるが、僧院に到着するや否や、さっそくフョードルの下品な物言いが始まる。フョードルが揶揄する『薔薇の谷間』について、江川卓の≪謎解き≫を元に解説。 -
ドストエフスキーの生涯と執筆の背景 ガリマール新評伝より ~葛藤する限り、人は神と共にある
難解・冗長で知られるドストエフスキーはどんな時代に生まれ、何に影響を受けて作家活動を開始したのか、ロシア史、文学史から読み解く詳伝より見どころを紹介。賭博、借金、投獄、女、波瀾万丈の人生の中でもロシアの行くべき道を模索し、人類の処方箋を探し求めたドストエフスキーの深い知性と義侠心がひしひしと伝わってくる良書。