カラマーゾフの兄弟– category –
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【15】 忠僕グリゴーリイ『好色な人々』の真摯な生き様 / 性も含めて一人の人間
カラマーゾフの兄弟の登場人物は揃って『好色』とされるが、ドストエフスキーは性を揶揄するのではなく、人間から切り離せない生きる力として描いている。科学の発達した現代と19世紀の性に対する考え方についての考察。 -
【6】 僧院の『薔薇の谷間』とゾシマ長老の女好き ~薔薇は何を意味するのか
父フョードルと長男ドミートリイの金銭問題を解決するため、高徳の僧ゾシマ長老の仲裁の元、家族会議が開かれるが、僧院に到着するや否や、さっそくフョードルの下品な物言いが始まる。フョードルが揶揄する『薔薇の谷間』について、江川卓の≪謎解き≫を元に解説。 -
【7】 自分にも他人にも嘘をつけば真実が分からなくなる 老いたる道化 フョードルとゾシマ長老の会話
僧院でもふざけた態度を取り続けるフョードルに、ゾシマ長老は「自分自身に嘘をつけば、自分のうちにも周囲にも真実が見分けられなくなり、自分にも他人にも尊敬を抱けなくなる」と諭す。長老の洞察力とフョードルの真の姿が垣間見える場面。 -
宗教団体の犯罪に関するコラム 平野啓一郎のコメントと『罪と罰』
小生は、「オウム真理教」が社会問題になった時からこの宗教の本質は文学かげ医術のレベルでしか語れないだろうと思っていた。宗教社会学やサブカルチャー論あたりの認... -
【4】 幸福に必要な鈍感力・アリョーシャ ~鋭敏な知性はむしろ人間を不幸にする
次男イワンが他人の施しを自分の恥と感じ、気むずかしい青年になったのに対し、アリョーシャはそれを苦とも屈辱とも思わず、誰からも愛される明朗なキャラに育ちます。父フョードルにも気に入られたアリョーシャの魅力と幸せに必要な「鈍感力」について解説。 -
【3】 自己卑下と高い知性が結びつく ~人間界の代表 イワン
次男イワンと三男アリョーシャは将軍夫人の家に引き取られるが、居候の引け目と淫蕩父を恥じる気持ちからイワンは気むずかしい青年に育つ。天と地の両面を併せ持つイワンの悲しい生い立ちと、父フョードルの意外な情愛が描かれる。 -
【2】 愛の欠乏と金銭への執着 ~父に捨てられた長男ドミートリイの屈折
父親に厄介払いされた長男ドミートリイは親戚宅をたらい回しにされ、短気で享楽的な人間に育つ。父親が裕福な地主と知ると、自分も金持ちと勘違いして散財し、無一文になるが、狡猾なフョードルは長男にビタ一文渡さない。金銭をめぐる憎悪の発端が描かれる。 -
【序文】「カラマーゾフの兄弟」の全てが凝縮した『作者より』と二部構成の謎
『カラマーゾフの兄弟』は二部構成であったことが序文で語られます。ドストエフスキーの死によって書かれることのなかった第二の小説(幻の続編)について考察。 -
一つの生命を代償に、数千の生命を堕落と腐敗から救う ~ドストエフスキーから永遠の問いかけ
「ひとつのちっぽけな犯罪は、数千の善行によって、つぐなえないものだろうか?ひとつの生命を代償に、数千の生命を腐敗と堕落から救うんだ」 心の奥底の願望を映し出すような学生と将校の会話によって、ラスコーリニコフは斧を手に取る。永遠の問いに答えはあるのか。 -
人間は近づきすぎると愛せない
「ぼくは身近な人間をどうして愛することができるのか、どうやってもわからないんだ。ぼくに言わせると、身近だからこそ愛することができないんで、愛せるのは遠くにいる者にかぎるんだよ」高尚な理想を唱えながらも身近な人間を愛せないイワンの心理とは。