カラマーゾフの兄弟– category –
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【40-1】 ゾシマ長老の名言とドストエフスキーの遺言『富者にあっては、それは孤立と精神的な自殺であり、貧者にあっては、羨望と殺人である 』
死を前にして、ゾシマ長老は修道僧らに最後の説教を行なう。第一節『ロシアの修道僧とそのもちうべき意義について』では、沈潜の価値とロシア民衆の救いが述べられている。 -
【39】 世界を変えるのは人の心から ~告解と改悛と赦しの意義
若き日のゾシマ長老は傲慢で血気盛んな若者だった。失恋の恨みから恋敵に決闘を吹っかけ、下男を殴りつけるが、突如、改悛の情が訪れ、僧院に入ることを決意する。そんな彼の元に謎の訪問者が現われ、遠い過去の殺人の罪を打ち明ける。 -
【38】ゾシマ長老の伝記とドストエフスキーの遺言 ~ヨブ記のエピソードより
死に瀕して、ゾシマ長老は神父やアリョーシャに自身の半生を語り、最後の訓諭を与える。ゾシマ長老の感銘は、脱稿に急逝したドストエフスキーの遺言のようでもあり、宗教的体験が垣間見えるようなパートに仕上がっている。 -
【37】 人生は数多くの不幸をもたらすが、その不幸によって幸福になる ~一粒の麦、もし地に落ちて死なずば
瀕死のゾシマ長老は、父と二人の兄の身を案じて涙を流すアリョーシャに「不幸によってこそ、おまえは幸福になる」と励まし、『一粒の麦、もし地に落ちて死なずば』というイエスの精神を覚えておくよう諭す。 -
【36】イワンの哀しき別れ ~おれは卑劣漢だ!
イワンはドミートリイと父の間の悲劇を予感しながらも、父に対する嫌悪感から、父の願いを蹴ってモスクワに向かう。それを見越していたスメルジャコフは「賢い人とはちょっと話すだけで面白い」とほくそ笑む印象的な場面。 -
【35】 悪魔は迷う心にささやく ~スメルジャコフとイワンの破滅
「旅立つべきか、とどまるべきか」思い倦ねるイワンにスメルジャコフはフョードルとグルーシェンカの秘密の合図、首から提げた3000ルーブリの封筒について話し、「わたしがあなたの立場でしたら、何もかもほうりだして、さっさと行ってしまう」とそそのかす。コラム『悪魔とは何か』と併せて。 -
【34-3】 『大審問官』 イエスの沈黙の意味 ~アリョーシャとイワンの別れ
料亭≪みやこ≫で「神はあるのか、ないのか」について語り合った後、イワンはアリョーシャに別れを告げて旅に出ようとする。イワンの胸の内を知ったアリョーシャは否定の気持ちと愛が両立するわけがないと案じ、自分の居場所はないと感じるイワンに愛情を込めてキスをする。 -
叙情詩『大審問官』 江川卓の注解(用語と引用)
長兄ドミートリイによる父親殺しを予感しながらも、ヨーロッパに旅立とうとするイワンの行動にアリョーシャは強い不安を抱くが、イワンは「カインとアベル」になぞらえて、「僕は兄貴の番人じゃない」とあしらう。後々、この判断がイワンの良心の呵責となって重くのしかかる。 -
【34】 大審問官 悪魔の現実論を論破せよ ~アリョーシャの接吻の意味
マタイ福音書「悪魔の三つの誘惑」を元に、大審問官がイエスに現実の矛盾を問い質す名場面。『イエスの接吻が意味すること』『イワンこそ現代人の葛藤』『心が死ねば肉体も死ぬ』『人間とは弱く卑しいもの』『大審問官の意味を探しても答えはない』等。江川卓『謎解きカラマーゾフの兄弟』の解説を交えて紹介。 -
【33】 神さまに天国への入場券をお返しする ~子供たちの涙の上に幸福を築けるか?
イワンは子供たちへの虐待を引き合いに出し、無垢な涙の上に幸福の建物を築けるかと問いかける。神は認めても、神の創った世界は認めない。だから天国への入場券をつつしんで神さまにお返しする、というイワンの心情が綴られた名場面。